場所・設備の準備について
タイマッサージにおいて、環境や雰囲気は大変重要な要素です。心地よい雰囲気は相手によい印象を与えるだけでなく、心身のリラックスを促すことができます。必要条件は以下のとおりです。
- 清潔で静かな部屋
- やわらかい色調の壁や床、天井
- 目にやさしい間接照明
- 適度な温度・湿度と換気
- 清潔で快適な布団と枕
- やわらかい布、タオル、膝当てクッション、ティッシュなどの備品
- 高齢者にはベッドを使用するほうがよい(膝が曲がらない人がいるため)
マッサージ前に行うこと
- マッサージ前に、セラピストが落ち着くための数分の時間のゆとりがあること。
- マッサージ前に、お客様がくつろぐための一息つける時間があること。
- セラピスト、お客様とも、マッサージ前にトイレをすませること。
- お客様の病歴、現在の健康状態、手術経験があるかなどを聞く時間があること。
- マッサージの簡単な流れを説明する時間があること。
- お客様が適切なマッサージの流れを考える時間があること。
- お客様が着替える時間と、必要があれば足を洗う時間があること。
- セラピストが手を洗う時間があること。
セラピストのマナー
- すべてのお客様に対し、親切でなければならない。
- 自分勝手であってはならない。
- 相手を説得させるために、むやみに大げさであってはならない。
- 自信がない場合は、お客様を専門家に委託するべきである。
- 愛憎、怒り、または誤解などの個人的な感情抜きに、すべてのお客様に公平であるべきである。
- 常によい精神状態でいることを心がける。
- 確固たる責任感を持っていること。
- 勤勉で、思慮深くあること。
- 慎重な態度であること。
- 礼儀正しくあること。
- 自分の体調を管理するため、セラピストは飲酒、喫煙は避けて、食事や運動にも気を遣う。
セラピストの心構え
- マッサージをする前は心静かに手を合わせ、お客様に集中すること。
- 動きやすく、華美でない適切な服装であること。
- 相手を思いやることのできる、礼儀正しい人格であること。
- 装飾品は身につけない。
- 髪の毛はしっかりまとめ、爪は短く、マニキュア等は使用しない。
- 口臭・体臭に気を使い、香水などは使用しない。
- 自分が病気の時には、マッサージをしない。
- マッサージ中、お客様の問いに答える時は、やわらかい口調で礼儀正しく話す。
- マッサージ中、飲食はしない。
- マッサージ中、携帯電話・スマートフォンを使用しない。
- マッサージ中、座った姿勢で行う場合、お客様の体に近づき過ぎない。(セラピストの胸部等がお客様に触れ、迷惑になる場合がある)
- 骨盤周辺、鼡径部、胸部などをマッサージする場合は、必要以上に触れない。
- お客様の上をまたいだり、体に座ったりしない。
お客様の準備
- やわらかい素材の動きやすい服を着てもらう。
- めがねをはずしてもらい、目の周囲のマッサージの時はコンタクトレンズに注意する。
- イヤリングやネックレス、腕時計などの装飾品ははずしてもらう。
マッサージ中の注意事項
- 食後すぐは、腹部へのマッサージは行わない。
- 高齢者には、特に気を使う。(うつ伏せで背中を押す時、ストレッチや矯正をする時は、骨粗鬆症があると骨折やひびが入る可能性があるため)
- 心臓疾患、脳卒中経験者、高血圧のお客様には強めのマッサージは避ける。(血圧が上がる可能性があるため)
以下の部分をマッサージする時は注意する。
(1)頭部について(幼児の時)
・小泉門は生後2~3ヶ月で閉じ、大泉門は生後18ヶ月まで空いている可能性があるため、2歳以下の場合は行わない。
・また、縫合部分も結合が弱い場合があるので弱めにマッサージをする。
・顔面へのマッサージは弱めにする。
(2)頚部について
・首の横は、脳に直接つながる頸動脈があるため注意する。
・鎖骨の上は、腕に直接つながる神経叢があるため注意する。
・耳の下は、顔面神経が通っているため、弱めのマッサージをする。
(3)腕について
・脇の下は、腋窩神経・腋窩動脈が通っているため注意する。
・手首は、弱めにマッサージをする。
・タイマッサージ中の注意事項
(4)背骨について
・骨の上はマッサージしない。
・背骨に異常がある場合・圧迫骨折がある場合・金属プレートが入っている場合はストレッチをしない。
(5)鼡径部について
・鼡径部は、風の門を開く場合でも大腿動脈を40秒以上押さない。
・力を入れて開脚のストレッチをしすぎない。(靱帯・腱が損傷する可能性がある)
(6)腹部について
・押す時は、必ず吐く息に合わせて押す。
・もし張っているところや硬結(しこり)がある場合は、医者に相談する
良いセラピストになるために
指の力をつける練習
指の力がつくように、指立て伏せなどの練習をする。そうすることで、押した時、手や指が震えず、押したい場所を必要な力で正確に押せるようになる。その結果、施術効果が早く出てお客様に喜ばれる。
押す力を3段階に分ける。(弱めの力、中程度の力、強めの力)
押し始めは、筋肉に押し始めたことを伝達するため弱めに力をかける。それから徐々に中程度の力で圧をかけ、最後に強めの力で押す。少しずつ力を強めることで、筋肉が強さに適応できるようになる。そして、こうすることで、痛みを感じることが少なくなり、また筋肉に損傷を与えるなどの危険を避けることができる。この時に、お客様の呼吸や顔色に意識を向け、呼吸が止まったり、顔がしかめっ面になったら力を弱めるようにする。高齢者、体が弱っているお客様、脳卒中後の麻痺がある場合は、筋肉や骨も弱っている可能性があるので注意をして行う。はじめから力を入れ過ぎると、筋肉が拒否反応で硬くなり、痛みが増すこともあるため、様子を見ながらゆっくり押すようにする。
また、力を抜く時もゆっくりと行う。もし素早く手や指を離した場合、力を入れすぎた場合と同様のことが起きる可能性がある。各ツボを押す時には、自分の指の感覚に意識を集中させる。そして、何のためにそのツボを押しているのか、どのくらいの強さでどのくらいの時間押すべきかをよく考えて行う。
呼吸について
セラピストが、ツボを押す場合、お互いの呼吸に意識することが重要である。ひと呼吸を一周期と考え、呼吸が早いと周期は短くなり、呼吸が遅いと周期は長くなるため、どのくらいの時間押すかは、病気の症状、期間、状態によって決める。押す時間は短すぎても効果が得られないし、長すぎてもセ
ラピストの指やお客様の体が炎症を起こし、時には内出血を起こす場合がある。
押す角度について
セラピストは、お客様の体に対して正面を向くような正しい姿勢で、適切なツボを押す。そうすることで、まっすぐにツボを押すことができ、施術するのに適切な圧をかけることができる。また、母指や手のひらで押す時も、肘関節をまっすぐに伸ばして、体重が母指や手のひらに直接伝わるように、美しい姿勢をとる必要がある。どこかが曲がっていると、力を入れてもツボに圧は正しく伝わらず、効果が期待でないか、全く効果がない場合もある。また、体を押す時は、手の置き方、足の位置、膝の位置、座り方などのポジショニングも正しくしなければならない。
マッサージをしてはいけない場合
- 深酒をしている場合
- 伝染の可能性がある皮膚病の場合
- 骨折している場合
- 傷がある場合、傷口が開いてしまっている場合
- 高熱の場合
- 癌を患っている部分は直接マッサージをしない
- リューマチ、関節炎、痛風などの場合
(BAB出版「タイマッサージバイブル」より抜粋